2002/3/5
「消えた一人」

今回も会社の慰安旅行です。
この会社は、社員40人位の小さな会社だけど
社長も副社長も専務もスゴク人柄がよくて、
毎年、私を指名して下さって、企画・手配から添乗にいたるまで、
本当に良くして頂いてるんです。

従業員は男の人ばっか、それも若い人が多いので、
宴会はいつも、スゴーク盛り上がるの。
歌って、踊って、そして、かくし芸。
楽しく飲んで、騒いでゴタゴタ言う人なんか一人もいなくて、
本当に明るいお客様なんです。

ただちょっと、ねぇ・・・・・・・

実は、この団体、盛り上がりすぎるせいか、
宴会が終わる頃になると、いつも、誰か一人いなくなるんです。
毎年、必ず一人・・。
それ以上もそれ以下もないんです。
必ず一人なんです。

それで・・・、
社長と副社長と専務と私は、必死で、その一人を探すんです。

去年の人は女子トイレで寝ていたし・・、
その前は勝手に空室に入って寝てて・・、
その前は物置で・・。

そして今年、
いなくなったのは、かくし芸で女装をしてた人。

必死で探したけど、
館内で見つからなかったので、外に出てみる事にしたんです。

すると橋の上で、女性の観光客3人が、橋の下を指差しながら、
口々に何か言ってるんです。

「大変!誰か・・・、人が・・・」

駆け寄って、橋の下を覗き込んで見ると、
乱れた服の足を広げた女の人が仰向けで寝ているんです。

「あれ・・あの服?・・・大変だわ」

私達が、女装の彼をつれて帰ろうとすると、
さっきの観光客が、

「私達、誰にも言いません」・・・と、涙目で言ったんです。

「ちょっと、なんか勘違いしてない??」・・・と思ったんですけど、
彼女達の気遣いを思うと、何も言えなかったんだけど・・。

そして、次の日、
案の定、彼は「何も覚えていません」って。

明るいのはいいんだけどねぇ。

でも、あの時の女性観光客3人・・・、
私達のことを一体なんだと思ったのかしら??