「私の乗るバス」


今回の話は、
プライベートでも友人であるガイドのMちゃんの体験談です。

Mちゃん、自称、霊感ゼロなのですが、よく視るタイプなんです。

北陸自動車道の某SAでのこと、
Mちゃんがバスから降りて建物に歩き出したところ、

「ガイドさん、私の乗るバスが見つからなくて」

・・・と、
初老の上品な女性から声を掛けられたんです。

でも、その女性はMちゃんのお客様ではありません。
ガイドは、皆、似たような恰好なので間違えられたんですね。

「あっ、御免なさい。 私のガイドさんじゃなかったんですね」

「いえ、よろしいですよ。
 バスの場所が分からないのであれば、一度、建物に戻られて、
 お連れの方を探されるほうが早いと思いますよ。」

「ありがとうございます。 そうします。」

その時、Mちゃんの後ろから

「高田さん、探しましたよ。 皆さん、お待ちですよ」

Mちゃんが振り向くと、
ファイルボードを持った女性添乗員が立っています。

「高田さん、バスに参りましょうね。」

女性添乗員は、
Mちゃんに会釈をすると高田さんを連れて歩き始めました。

2〜3mほど歩いたところで、高田さんが振り向き、
Mちゃんに

「ガイドさん、ありがとね。」

・・・、と深々と頭を下げたそうです。

その時、女性添乗員も振り向き、

「ニタァ〜〜」

・・・と、冷たく、薄気味悪く微笑んだんです。

Mちゃんは、その表情に背筋が寒くなり、
軽く会釈をすると、慌ててその場を離れたそうです。 

すると、
そこへ、サイレンを鳴らしながら救急車が入ってきたんです。
フードコートの建物の前に人だかりが出来ています。

Mちゃんが様子を見に行くと、
初老の女性が運ばれて行くところでした。

そう・・・、高田さんです。

その後の経緯は、Mちゃんには知る由もありません。

でも、おそらく、
高田さんはお亡くなりになられていて、
あの女性添乗員が新たなバスツアーに誘ったのでしょう。

女性添乗員の姿をした死神のバスツアーに