「ベッドの理由」
Y県・K温泉「F」


東名自動車道SAの乗務員室で一緒した
東京のバス会社のドライバーさんからお聞きした体験談です。

その日、
ドライバーさんが通された乗務員部屋は、
畳敷きのオーソドックスな和室だったのですが、
何故か「どぉーん」とベッドが置いてありました。

ベッドの横にはいかにも和室っぽい感じのちゃぶ台。

ちゃぶ台の上には
ポットと急須と湯呑みという感じで思いっきり和風です。

和洋折衷と言えば聞こえはいいけど、
どうにも落ち着くことができない部屋だったそうです。

夜十一時過ぎ、
ベッドに入った彼は案の定、なかなか寝付けません。

どうもしっくりこないと感じた彼は、
ベッドの布団を畳に下ろして眠ることにしました。

「せっかくの和室なんだから、やっぱりこれでないと」

畳に移動し、やっと落ち着いた彼はそのまま眠りについたんです。

ところが深夜、
熟睡していた彼は急な寝苦しさに目を覚ましました。

「うわぁー!」

彼が目にしたのは、
自分の腰の上にいる裸の女性でした。
彼女は腰を振りながら

「あぁ〜ん、いいぃ〜、感じるぅ〜」

と喘いでいます。

しかし、その女性の姿は半透明で、
天井から下がる蛍光灯の小さな光りが透けて見えています。

彼はすぐにその女性がこの世の者ではないことに気づきました。

「逃げなくては」

・・・彼はそう思ったのですが、身体が全く動かないのです。

女性の霊は騎乗位のまま行為を続け、

「い、いくぅ〜! 中に、中に出してぇ〜! うっ……」

彼女は満足したのか、そのまま消えてしまいました。
彼は生気を完全に奪われてしまい、

「か、体が動かない……。腰が痺れる……」

彼は布団の中で身動きができず、
眠れたのか、それとも眠れなかったのかも分からないまま
朝を迎えたそうです。

翌朝、さっそくフロントに苦情を入れると…、

「畳でお休みになられるからですよ。
 ベッドがあるんですから、ちゃんとベッドをお使い頂かないと・・・
 私共も困ります。」

「えっ? そういうもんなんですか?」

「はい、そういうものです」

「あっ、それは、すみませんでした。」


私は、何か違う気もするんですけど。
このお部屋では、そういうものなのだそうです。