「手を振る少女-2」

この話は、
第二夜 終章 第98話「手を振る女の子」とほぼ同じ話ですが、
体験者は別のドライバーさんです。

別のお客様、別のドライバーさんでの旅行でしたが、
旅程、宿泊ホテルは同じでした。

ただ、
ドライバーさんの泊まった部屋が同じだったかどうかは不明です。


今年の夏、
猛暑日が続く中の3泊4日の中国地方への旅行でのことです。

旅行一泊目、
ドライバーのMさんが泊まったのはホテルは2階の乗務員部屋。

部屋には通されて、窓のカーテンを開け外を見ると、
5才位の小さな女の子が彼を見上げて、嬉しそうに手を振ってます。
彼は、

「従業員の子供かな?」

・・・と思い、
女の子に手を振り返すと、女の子は満面の笑顔を浮かべ

「バイバァ〜イ」

・・・って走り去っていきました。


翌日の宿泊は他館先の民宿。
部屋に通されて何気なく窓を開け外を見ると

また、女の子が手を振っています。
髪型も服装も昨日の女の子と同じ・・・いえ、似ている気がします。

「えっ、昨日の女の子? まさかね・・・
 全然違う場所だし、これ位の年の子は皆、同じように見えるからな」

・・・と、
不思議な感覚に包まれながらも、女の子に手を振りました。

すると、女の子は、昨日と同じように、
満面の笑顔でかけていきました。


そして、3日目
彼の通された部屋はホテルの乗務員部屋。

窓のカーテンは開いた状態です。

彼は、昨日、一昨日の事もあるので、
窓のカーテンを閉めようと窓に近づいたんです。

その時、
自分の姿のスグ後ろに女の子が立っているのが、
窓に映っていたんです。

「う、うそだろ・・・」

彼が恐る恐る振り向くと
間違いなく、昨日の女の子・・・一昨日の女の子です。

「こ、この女の子、生きている人間じゃない」

彼は、一瞬でそれを悟ったそうです。

「に、逃げなくっちゃ」

でも、
足がガクガク震え、一歩も動く事が出来ません。
唇も急に乾いて、上唇と下唇が張り付いて声も出せません。

「あ、うぅ〜、たぁ、すぅ、けぇ、てぇ」

・・・と、声にならない声をあげる事しかできません。

すると、女の子は小首をかしげて、少し気取った感じで微笑み

「気をつけて。 気をつけてね。 絶対よ。」

・・・と大人っぽく言うと、スゥ〜と消えたのです。

彼は、そのまま腰が抜けたようになって、
しばらく、床に座り込んでしまったそうです。

小一時間もそうしていたでしょうか。

「あぁ、そうだ。 こんな事してられない。
 明日も朝早いから、汗でも流さないと」

彼は、そう自分を奮い立たせて大浴場に向かいました。

湯船につかると、先程の出来事がウソのようにリラックスできて、

「あぁ〜、いい風呂だ。」

彼はそのままウトウトしてしまい・・・


「大丈夫ですか! 大丈夫ですか!」

彼が目を開けると、
ホテルの従業員の心配そうな顔がありました。

「よかった、今、救急車を呼んでいる所です」

「救急車? 私は一体・・・」

「湯船で寝てしまわれて、そのまま溺れてしまったんですよ」

「溺れた・・・」

「でも、良かったです。 
そこにいる女の子がスグに知らせてくれたんですよ」

「女の子?」

「あれ? さっきまでいたのに、どこ行ったんだろ?」

「その女の子って・・・」

彼は、昨日、一昨日、今日と
彼の前に現れた女の子の特徴を話しました。

「そう、その女の子です。お客様のお子さんなんですか?」

「あ、いえ。」

その時、彼はふと感じたそうです。

「そういえば、あの女の子・・・、昔、会った気がする。」


第98話のドライバーのKさん、この話のドライバーのMさん
2人が見たという女の子は、同じ女の子だったのでしょうか?
一体、彼女は何だったんでしょうか?

何とも不思議な話です。